【Column Vol.1】
「立秋」を過ぎたとはいえ、列島は殺人的な暑さの渦中から未だ抜け出せていない日々が続いております。どうか皆さまも危険なこの暑さから身を守って日々安穏な生活を送っていただきたいものだと感じているところでございます。
さて、今回のコラムのテーマは「大安戌の日に安産祈願に来るのがベストなの?」でございます。よくお参りに来られた方から「安産祈願ってやっぱり大安戌の日がいいのよね?」といった声や「そもそも戌の日しか御祈願してはいけないと思っていました」といった声が多くお見受けされます。
最初にこのテーマを当寺から一つお答えをさせていただくと、安産祈願は大安戌の日にこだわる必要は特にありません。
大安戌の日ってそもそも何?
「大安」とは六曜のうちの一つです。大安の日は一日中何をしても上手く事が進む日とされて、結婚式や慶事が多く執り行われる慣習があります。「六曜」とは中国発祥の暦注であり、いにしえの日本にも伝えられ以後親しまれてきました。ですが、この六曜という考え方は明治時代に政府が「六曜は迷信である」として一時期、六曜の記載されたカレンダーの発売を禁止したという歴史もあります。
また「戌の日」とは十二支のうちの一つである「戌」にあたる日のことです。犬は一度にたくさんの子犬を生む姿から、戌の日に安産祈願をするとよいと言われるようになったといいます。
この六曜の大安と十二支の戌にまつわるそれぞれの話から、人々は大安戌の日は安産祈願に適した日とするようになったのです。
安産祈願、いつやってもいいってホント?
結論から申し上げるならば、それは“ホント”でしょう。とはいっても大前提として、尊い命を宿すお母さまの健康が第一義でございます。体調がすぐれないのに、ご両親さま方が「安産祈願は大安戌の日に行かなきゃ!」などと身ごもった女性を急かして安産祈願に当寺へ訪れ、その結果より一層体調がすぐれなくなってしまってはせっかくの安産祈願が台無しになってしまいますし、何よりも安産の仏さまであられる御本尊の子安荒神さまもお悲しみになってしまいます。ですので、体調が安定してきた頃合いを見計らって当寺へお出かけして安産祈願を受けていただければと思います。
当寺としても決して「安産祈願を大安戌の日にやるな」とは申しません。ですが、仏教ではインドから中国、朝鮮、そして日本へ伝わる際に、それぞれの国々にいらっしゃる土着の神さまはお釈迦さまの教えをお聞きになって「仏教を護ってくださる神さま」になったと考えます。有名な例が「阿修羅さま」でございます。もともとは古代インドにおいて、土着の戦いの神さまとして崇められてきましたが、お釈迦さまの尊い教えを聞いて仏教を護っていくとお誓いされて以来、お釈迦さまの眷属(けんぞく=お釈迦さまと一緒になって私たちに仏教を広めてくださる仏さま)になられました。このように多くの神さまは仏さまにお従いになって、仏教を護ってくださっておられるのでございます。
当寺の安産祈願は、神社で行う「神式」ではなく「仏式」であり、仏さまを讃嘆する儀軌に従って厳粛に執り行われます。ですので、大安戌の日であろうとなかろうと、仏さまの御威光によって悪の覇気は悉く除かれて安産祈願が行うことができます。
このため、大安戌の日でなくても安産祈願は執り行ってもよろしいのでございます。
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